永谷竜一さんの就農事例(H27年就農 美作市・花壇苗)

「好きな仕事で飯が食えるんだったら、そんなええことはない」

2015年4月に花壇苗(花の苗)農家として新規就農した永谷竜一(ながやりゅういち)さん(32歳)。永谷さんは故郷・美作市で就農の夢を叶えた。

大規模な農業法人が多い花壇苗農業界で、あえて個人農家を志した永谷さんに、厳しさとやりがいについておはなしを伺いました。

花壇苗農家になるつもりはなかった。
けれども…

永谷さんは、様々な仕事を経験したのち、25才のとき、農家になろうと心機一転、農業を志します。

「はじめは花壇苗農家になるつもりはありませんでした。野菜でもお米でもよかった。しかし、農家は「なりたい」と願ってもすぐに就職先があるわけではないし、目指せば即なれるものではないとわかっていました」

永谷さんは、知人からの紹介で美作市大原の農業法人へ就職。この法人のメイン栽培が花壇苗だったため、花壇苗農家の基本を学びます。その過程で永谷さんに花壇苗農家の道が拓けていきます。

「振り返ると中学生の頃、植物を自分で購入して育てていたことなどあったので、潜在的に植物を育てるのは好きでした」

個人的に2つの農業法人を渡り、約3年間の勉強期間ののち、独立を果たします。

花壇苗のコツは、品質にこだわり、適正価格を守ること

「花を育てるのってすごく難しいです。花は「姿」じゃないですか。だから、「姿」が完璧なものが求められます。僕らのお客さんは、一般の方ではなく、プロのバイヤーさんです。求められるもののレベルが高いです」

永谷さんは、就農後、一から販路をつくったといいます。主な販路は、市場の競りと直接取引のお店への卸し。オフシーズンには、関西の園芸店を回って、独自の販路を開拓するなど、若さとフットワークの軽さで花・苗農家としての可能性を広げています。

「園芸店に足を運んで、担当者と顔を合わせて、名前を覚えてもらって、購入してもらうスタイルです。
そこでも感じるのは、商品さえ良ければ、営業をしなくても売れるということ。狭い業界なので「ええ花つくる花壇苗だ」と広まれば、おのずと需要は増えます」

よいものをつくり、適正な価格で販売することが大切だという永谷さん。大手小売店を主な取引先にすると、どうしても価格競争になります。そこは永谷さんの目指すところではありません。

個人花檀苗農家は、量がつくれない分、質重視でなければ採算が取れません。だからこそ、永谷さんは「品質」にこだわり、情熱を注ぎます。苗花をただつくればいいわけではなく、農業の成り立ちや商い、そして、コミュニケーションを大切にしていることが伺えます。

厳しい世界での挑戦。まだやれることはある

新規就農をするにあたって、やはり気になるのは「農地確保」と「自己資金」。

農地は地元を歩き回って探し、元は水田だったこの場所にたどり着きます。
「地主さんも、僕の前にここで稲作をしていた農家さんも顔見知りだったので、比較的スムーズでした」と永谷さん。地の利を生かした縁でクリアしました。

自己資金はやはりネックとなり、永谷さんも運転資金と設備投資の資金を借入。少しでも経費を浮かせるために温室ハウスは自ら組み立てたそう。

なにより、花壇苗は、その見た目の美しさとは裏腹に、個人農家で食べていくことは難しい業界だといわれています。

「定番のものは末永くつくれるけれど、バカ売れはしません。流行りのものは、爆発的に売れますが、長続きしない。マーケットを見ながら、生産する品種はどんどん変わっていきます」

毎年変わる花のトレンドを先取る時代の読み、プロの厳しい目に晒される日々がそこにあります。永谷さんが栽培する主な花はガーデンシクラメン、パンジー、ビオラ、なでしこ、ポットカーネーション、金魚草などその数30品目以上。

新規就農者の数は片手で数えるほどしかいない花壇苗業界ですが「まだやれることはあります」と永谷さんはいう。

「高年齢化が進んでいるので新しい風を吹かせる存在としてやっていけると思います。でも素人からいきなり新規就農は難しいので、技術は学んだほうがいい。
好きな仕事を選んで、僕にはそれが合って、なおかつ、思ったよりも順調にここまでやっています。
好きな仕事で飯が食えるんだったら、そんなええことはないじゃないですか。まあ、順調にさえいけばですが(笑)」

プライベートは、家族との時間が増えたという永谷さん。気候のいい時期は農作業に追われるが、花のオフシーズンである真夏や真冬は家族との時間が持てるといいます。

「昨日も、夕方4時に子どもの習い事へ送りに行ったのですが、普通の会社員ではこんな時間に動くことは難しいと思うので、時間の融通が利くことは便利ですね」

厳しい世界での挑戦を続ける永谷さんですが、その笑顔からは充実した日々を送っていることが伺えます。


(TEXT:ココホレジャパン)

就農までのポイント

  • 美作市を就農地に選んだ理由
    実家の近くで仕事がしたかったから。
  • 農地の確保方法
    良さそうな農地を自分の目で確認しながら探し、当時の耕作者がやめる意向があり、その方を介して所有者と交渉した。
  • 資金の確保情報
    制度資金(青年等就農資金)を活用し、ビニルハウス等の施設・機械等の初期投資や肥料や農薬等の運転資金を確保した。
  • 技術習得の方法(就農後も含む)
    3年間農業法人に勤務し、その間に栽培技術を習得した。
  • 住居の確保方法
    地元だったので問題にならなかった。
  • よく相談したのは
    独立にあたっては家族に相談し、独立を決めてからは農業普及指導センターや市の担当者にその都度相談した。

次回の掲載予定

次回はぶどうで就農した方の事例を紹介します。

(9月中旬ころ掲載予定)

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