本郷達郎さんの就農事例(H27年就農 吉備中央町・ぶどう)

「自然と対話することがいいぶどうにつながる楽しさがある」

先人たちの努力によって、岡山県産のぶどうは全国屈指の人気を誇る一大ブランドになりました。そんな岡山でぶどう農家を目指し、東京から移住したのが本郷達郎さん(34歳)。はじめて訪れた土地で、夢を叶えた本郷さん。憧れとリアルを折衷した、タメになる就農ストーリーです。


まったくの素人、都会育ちが田舎で就農。食べていけるかどうかを最優先に考え岡山へ

ぶどうの品質を左右する粒間引き。集中力と忍耐力が必要だ

東京でITコンサルの仕事をしていた本郷さん。仕事で忙殺される日々に「このままで大丈夫かな」と漠然とした不安が日々あったといいます。

「もともと農業に興味がありました。しかし、農業で生活していくことは難しいと見聞きして、農業は趣味程度で済まそうと思っていました」 


半ばあきらめつつも、農業・就農への憧れを持ち続け、東京都で行われる新規就農フェアなどに通っては情報収集をするうち「年齢を重ねると動きづらくなるかもしれない。新たなことを始めるなら今じゃないか」と思いを募らせます。それは本郷さんが29歳のときでした。


「家族がいるので、農業をやりたい!という自分ひとりの思いだけで夢を叶えるのは難しい。きちんと「職業」にしなければ。食べていけるかどうかを最優先に就農を考えました。

果樹の中でも岡山県の桃やぶどうはブランド化されていて、市場で高く取引されていることを知り、「これならば家族を養っていけるのではないか」と思いました」


そして本郷さんの父親の出身地が岡山県だったことも大きい。本郷さんのルーツであり、果物のブランド力など申し分ない岡山県の実績は、一家の大黒柱の責任感と本郷さんの夢を後押ししました。


吉備中央町の自然や気候をふまえ、その土地のぶどう農業を学ぶ

一から自分たちでつくったぶどうの棚。長身の2人に合わせたジャストサイズだ。

本郷さんが選んだ果実は「ピオーネ」と「シャインマスカット」など、岡山で多く栽培されているぶどう。特に「ピオーネ」は岡山県が日本一の生産量を誇ります。

 

朝晩の寒暖差によって、芳醇な甘味を育み、美しい色がつくぶどう。おのずと本郷さん一家の移住先は岡山県中から北部に定まり、本郷さんたちは、岡山県のちょうど真ん中にある吉備中央町を新天地に決めました。

 

本郷さんは2013年のはじめに家族で移住し、同年4月から2年間の研修がはじまります。

 

通常の新規就農研修制度は、受入指導農家(親方農家)があり、親方農家のもとで農業を学びますが、吉備中央町は、農業公社も受け入れ先の一つとなり、農業公社で職員に農業を習うシステム。年間150日の研修で、週3~4日、農業公社の農場へ通い、他の時間を地元の農家さんへ学びに行くなど、独立を見据えた準備時間に充てられます。

 

「農業公社では、年に2、3人新規で農業公社に入ってくるため、常に4、5人で農作業を行います。見ず知らずの移住先で、同じ志を持つ仲間と知り合えるのは心強いです」

 

吉備中央町の自然や気候をふまえた、その土地のぶどう農業を学ぶ2年間。地元のひととのふれあい、助けられたこと、暮らしのなかの営みの一部として、農業を体験できたといいます。

 

普段の暮らしを妻の文華さんに伺うと「吉備中央町の人々はみんなとっても優しいです」とにっこり。「最初はすごい田舎だなってびっくりしましたが、来てすぐに町営住宅に入ることができましたし、みなさん親切にしてくださいます。待機児童もないので、子どもをすんなり保育園に入れることもできました」と、住環境は申し分ないようです。


満足のいくぶどうを収穫できるようになって稼いで家族を安心させたい

本郷さんが所有する畑は2か所で、5反と1.5反。夫婦人三脚で手入れしている。

2年間の研修ののち、2015年に独立。晴れて本郷さんは「ぶどう農家」になりました。吉備中央町で借りた5反の畑はまっさらな平地の畑。文華さんの友人づてでご縁があったそう。

 

研修終了後に棚を立てて、ぶどうの樹を植えました。まだ生育して2年、今年が初生り。本格的な収穫はまだ先です。自分の畑の面倒を見ながら、アルバイトで農業公社などの畑も手伝って生計を立てています。

 

「畑を広げる予定はありません。今もっている畑でぶどうが収穫できるようになったら、それだけで夫婦2人で手いっぱいです。家族が生活していく分にはそれで充分かなと思っています」と、身の丈で農業をしていくという本郷さん。

 

ぶどう農家として一番のやりがいをうかがうと、本郷さんは「間引きによって収入が変わってくること」といいます。

 

「いい房をつくればいい値段がつきますし、悪ければ、値段が落ちる。房づくりが価格に関わってくるので、努力やセンスが目に見えるのがやりがいにつながります。自然と対話することがいいぶどうにつながる楽しさがあります」。一房に愛情や技術を注ぐ。そこが、ぶどう農家の醍醐味です。

 

本郷さんに今後の抱負を伺うと「去年、ぶどうで賞をもらいましたが、まだまだなのでもっと技術をあげたい。そして新しくつくった圃場の木を大きくさせて、早く、満足のいくぶどうを収穫できるようになりたいです。早く、稼いで家族を安心させたいのが一番です」

 

本郷さんの夢は、「憧れ」を後押しする「安心」をもたらした、ここ岡山県で実り、根付き、永く続いていくものとなったようです。


(TEXT:ココホレジャパン)

就農までのポイント

  • 岡山県(吉備中央町)を就農地に選んだ理由
    父が岡山県出身で親近感があり、また岡山県の果物はブランド化されており、生計が立てやすいと考えたから。岡山県に決めた後は、就農オリエンテーションで県内各地を見てまわり、アクセスの良さ(空港が近い)や研修生受入の実績があったため吉備中央町を選んだ。
  • 農地の確保について
    なかなか決まらず大変だったが、最終的には妻の友人の父から農地情報の提供があったほか、受入指導農家も成園情報を提供してくれた。地元の縁が大切。
    現在は65aの面積でブドウを栽培している。
  • 資金の確保について
    自己資金を中心に、施設については制度資金を活用する等資金を確保した。
  • 技術の習得について
    吉備中央町農業公社で年間150日、しっかりと技術習得研修を受け、栽培の一連の流れを学ぶことができた。就農後も農業公社にアルバイトに行く等よい関係性を保っている。
  • 住居の確保について
    研修当初は研修生用住宅に入居。その後、町営住宅の募集があり、現在もそこに住んでいる。
  • 相談相手は
    就農地を決めてからは、吉備中央町役場、農業公社、県の農業普及指導センター職員に相談に乗ってもらった。研修に入ってからは、受入指導農家や先輩就農者にもいろいろアドバイスを受けることができた。

次回の掲載予定

次回はぶどうで就農した方の事例を紹介します。

(10月掲載予定)

PAGE TOP